天穂のサクナヒメ、「広告をもっと見せて」とユーザーが言い出した稲作ゲームの設計思想

バケツに田んぼを作った2人組と、彼らのゲームに農水大臣が反応した日
5年後、そのゲームのスマホ版で「ある判断」をしたら、ソシャゲ史上ありえない光景が生まれた
しかもその広告から、実際に商品を買いに行く人まで現れた
ひろ🐼データをストーリーで語るマーケター 2026.02.17
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バケツの田んぼから始まった、2人だけの開発室

2015年、コミケC89

2人組の同人サークル「えーでるわいす」が、稲作ゲームの試作を出展してた

プログラム担当の「なる」さんと

グラフィック担当の「こいち」さん

たった2人

農業の経験はゼロ

稲作の知識もゼロ

なるさんがやったのは

農研機構の論文を片っ端から読み込んで、自宅のベランダにバケツで田んぼを作ること

200日間、毎日撮影

「土壌の良し悪しを決める窒素、リン、カリウムの増減や、稲の成長に影響する気温、水温に関するものなど論文もたくさん読みました」

ここだけ聞くと「変な人」やん

でもこの「変なこだわり」が、5年半後にとんでもないことを起こす

完成したゲームの名前は「天穂のサクナヒメ」

種籾を塩水で選別して、田んぼの水温を管理して、雑草を手で抜く

稲作を13工程で完全再現した

正直、誰がやりたいん?って話やん

でもマーベラスの目に留まって商業化が決まった

発売前の社内予想は3万本

ニッチなインディーズゲームとして、そのくらい売れたら御の字

2020年11月、発売

2週間で50万本を突破した

コロナ禍の巣ごもり需要も追い風にはなった。でもそれだけで150万本は説明できん

何が起きたか

農林水産省のサイトが攻略wiki」ってSNSでバズった

ガチで農水省のデータが攻略に使えるレベルやった

全農がSNSで反応して

のちには農水大臣までもがサクナヒメに言及した

最終的に累計150万本以上出荷

社内予想のじつに50倍

ファミ通・電撃ゲームアワード2020で3冠

2人で作ったゲームが、国を動かした

でもこの話にはまだ続きがある

150万本ヒットの「設計思想」が、6年後、全く別の領域で威力を発揮することになる

***

この記事で学べること

広告の話やけど、提案書もプレゼンもメールも全部同じ。

「届け方」で結果が変わる話

「広告ってなんで嫌われるんやろ?」って思ったこと、ない?

2人の同人サークルが作った稲作ゲーム「天穂のサクナヒメ」

150万本の大ヒットを記録して、2026年2月にスマホ版が登場した

なのにSNSで一番話題になったのは、

ゲーム本体やなくて「広告が好き」っていうユーザーの声やった

ソシャゲの広告やで?

普通は嫌われるやつ

なのにサクナヒメだけ歓迎されてる

その理由に、広告以外の仕事にも使える設計思想が隠れてた

✓ たった2人で150万本を売った「面倒を価値に変える」設計思想

✓ 67.5%が不快と答える動画広告を「飯テロw」に変えた、たった1つの判断

✓ App Store評価4.4(5,700件超)で「広告が楽しい」とレビューされる異常事態

✓ 広告を見たユーザーが実際に商品を購入し始めた理由と「文脈」の力

✓ Netflixも実践する「コンテキスト広告」と、Cookie規制で再注目される背景

***

目次

1. バケツの田んぼから始まった、2人だけの開発室

2. 「面倒くさいゲーム」が50倍売れた理由を、開発者自身も読み違えてた

3. App Store評価4.4なのに「広告が好き」と言われた異常事態

4. 広告を見たユーザーが、広告主の商品を買いに行った

5. なぜ「出す場所」を変えただけで、広告の好感度が逆転するのか

6. まとめ:「届く場所」の設計思想

***

「面倒くさいゲーム」が50倍売れた理由を、開発者自身も読み違えてた

なるさん本人が、このゲームの大ヒットについてこう言ってる

「一言で言えばですね」

謙遜に聞こえるかもしれん

でもこれ、半分は本音やと思う

ゲーム的に言えば稲作は面倒くさい要素なので、すぐに飽きるだろうと思っていた

開発者自身が、ユーザーが本気で米を育てるなんて想定してなかった

しかも開発中は苦労の連続やった

前例がないゲームだったので、参考にできるもの、イメージになるものがなくて、ゲームの形になかなかならなかった

5年半かけて完成させたゲームに対して

開発者自身が「面倒くさすぎて飽きるかも」と心配してた

でも蓋を開けたら真逆やった

プレイヤーは本気で米を作り始めた

肥料の配分を考え、水温を調整し、害虫対策を練った

なんでこうなったんか?

あなたの周りにもこういう経験ない?

DIYで家具を作ったとき、完成品を買うより愛着が湧く

キャンプで苦労して火を起こしたとき、コンビニ弁当より飯がうまい

「自分で手間をかけた」という事実が、体験の価値を押し上げる

普通のゲームは「快適さ」を売りにする

ワンタップで完了、ストレスゼロ、時短が正義

サクナヒメは真逆やった

「面倒くさいことを、面倒くさいまま体験させた」

やらされる作業」と「自分で選んだ手間」は全く違う

種籾を塩水で選別する工程は、確かに面倒やん

でもそれを自分の判断でやってるから「作業」が「体験」に変わる

「手間を省く」やなくて「手間を価値にする」って発想

これがサクナヒメの設計思想の核やった

ここまでが「ゲームの話」

次の問いは「この設計思想が、なぜスマホ版の広告で効いたのか」

***

App Store評価4.4なのに「広告が好き」と言われた異常事態

2026年2月5日、

サクナヒメのスマホ版「天穂のサクナヒメ〜ヒヌカ巡霊譚〜」

が配信開始された

事前登録者20万人突破

基本プレイ無料のソシャゲ

つまり、動画広告が入る

ここで数字を見てほしい

動画広告を不快に感じるユーザーは67.5%

ネット広告全般で「嫌な思いをした」と答える人は75%

不快の理由1位は「コンテンツ視聴の邪魔をされる」で73.8%

3人に2人が「不快」と感じる世界

でもサクナヒメのユーザーはこう言った

広告がマジで良くて、広告がゲーム体験を豊かにするという初めての経験に驚いている

「初めての経験」って言葉に注目してほしい

何十本もソシャゲやってきた人が「こんなの初めて」と言ってる

ほかにも声が続々出てきた

「何時ものだるくて端末手放したくなる転職だのうざいアプリのスパム広告じゃなく」

「梅干しとか白米に合うものばっかで、お腹が空く」

「広告ストレス0」

「ゲームの広告で腹が減ったのは初めて」

しまいには「広告ギャラリー機能を作ってほしい」という声まで出てる

広告をわざわざ見返したいって、聞いたことある?

App Storeの評価は4.4/5.0(レビュー5,700件超)

そのレビューの中に

広告はサクナヒメらしく、お米に関連するCMを採用していてすごく楽しい

と書いてるユーザーがおった

ゲームのレビューで「広告が楽しい」って書くん、異常やろ

ソシャゲの広告って普通こうやん

不快 → スキップ → 嫌い

サクナヒメはこうなった

歓迎 → 最後まで見る → 「もっと見たい」

完全に常識が逆転してる

なんで?

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続きは、2392文字あります。
  • 広告を見たユーザーが、広告主の商品を買いに行った
  • なぜ「出す場所」を変えただけで、広告の好感度が逆転するのか
  • まとめ:「届く場所」の設計思想

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